イェレナを語る上で、原作コミックス第118話およびテレビアニメ第77話『騙し討ち』で描かれた、通称「イェレナの顔芸」と呼ばれる戦慄のシーンを避けて通ることはできません。牢獄から解放されたアルミン・アルレルトが、ジークの真意に同調したふりをして「ジーク戦士長の崇高なお考えに涙が出ます」と語った直後、イェレナが見せた怪異な表情です。
普段の物静かで知的な佇まいから一転し、顎を突き出し、眉を極限まで吊り上げ、瞳孔を開ききった般若のような形相でアルミンを見下ろしたあのカットは、読者や視聴者に底知れぬ恐怖を与えました。次の瞬間には何事もなかったかのように穏やかな笑みを浮かべ、「頼もしいです」と告げる緩急の不気味さは、彼女の精神構造の歪みを象徴しています。
この凄まじい表情の背景には、主に3つの心理的要因が作用していました。
- 欺瞞に対する瞬時の見透かし:知略に長けたイェレナは、アルミンの涙が計算された嘘である可能性を直感的に察知していた。
- 裏切りに対する絶対的威嚇:「神(ジーク)を愚弄し、計画を邪魔立てするなら即座に殺害する」という剥き出しの殺意と警告を、無言の圧力で叩きつけた。
- 狂信者の聖域防衛本能:自身が生涯を賭けて信奉する教義を、他者が軽々しく口にすることに対する本能的な嫌悪感と冒涜への激怒。
ネット上では当時、このカットが瞬く間にミーム化され、多数のコラージュ画像が拡散されました。しかしギャグとして消費される一方で、「人間が他者の嘘を完璧に見抜いた際に見せる最も恐ろしい防衛反応」「諫山創氏の描く狂気表現の最高到達点」として、今なお作品屈指の名シークエンスとして高く評価されています。