愛着障害の根底に横たわっているのは、幼少期に家庭環境の中で刻み込まれた深い心理的受傷です。子どもにとって親は世界そのものであり、無条件の受容と安心感を提供する「安全基地」でなければなりません。しかし、機能不全家族や過干渉・ネグレクトを行う親のもとで育った場合、その安全基地は脅威の源へと変貌します。
日本社会でも広く議論されるようになった幼少期のトラウマや毒親との関係性において、最も愛着を不安定にさせるのが「条件付きの愛」と「親の気まぐれな態度」です。成績が良い時だけ褒められ、感情的になった親の機嫌を取らなければ居場所がなかった子どもは、「ありのままの自分には価値がない」という強固な自己否定感を植え付けられます。
こうして形成された欠乏感は、大人になっても決して消えることのない激しい愛情飢餓感へと姿を変えます。心に空いた底なしの穴を他者の愛情で埋めようとするため、恋愛対象に対して親の役割、すなわち「どんな理不尽も許し、永遠に自分を愛し続けてくれる存在」を無意識に求めてしまうのです。
精神科クリニックの臨床記録やカウンセリングの手記には、次のような当事者の切実な言葉が頻繁に記録されています。
「誰かに抱きしめられていても、心の奥底が凍りつくように寒い」「どれだけ『好きだ』と言われても、次の瞬間には相手が自分を嘲笑して去っていく幻影が頭から離れない」
この埋まらない空虚感こそが、衝動的なリストカットや過量服薬(OD)、SNS上での過激なアピールといった自傷的行動の正体と言えます。