インターネットカルチャーから身を起こし、国民的なアイコンとなった米津玄師の歩みは、スタジオジブリの映画『君たちはどう生きるか』の主題歌「地球儀」において一つの記念碑的な到達点を示した。宮﨑駿という巨大な作家の人生と対峙しながら、米津が紡ぎ出したのは、国家的なアンセムではなく、恩師への手紙のようなひどくプライベートな調べだった。
どれほどタイアップの規模が膨らもうと、自己の作家性を一歩も売り渡さない姿勢。それは、かつてボーカロイドシーンという実験場で培われた「他者の目を気にせず、自らの美意識だけを信じて音を彫り込む」というDIY精神の延長線上にある。マスメディアの巨大な装置に飲み込まれることなく、自らがカルチャーの中心軸となって全体を牽引していく。彼が見せつけた背中は、後に続くインディペンデントなクリエイターたちにとって確かな羅針盤となっている。