およそ200万枚とも言われる驚異的なセールスを記録した名曲『宗右衛門町ブルース』だが、その船出は決して順風満帆なエリートコースではなかった。もともとは夜の街で手売り同然に配られ、有線放送のリクエストからじわじわと火がついた完全な現場主導のヒット作である。派手なタイアップもなければ、巨大な宣伝予算が投じられていたわけでもない。夜の酒場でグラスを傾ける名もなき客やホステスたちの共感だけが、この曲を全国区のモンスターへと押し上げた。
そして現在、この楽曲はかつてない規模の再評価の波に包まれている。シティポップに続く日本のヴィンテージ・サウンドの深層として、海外のトラックメイカーや国内の若い世代がこの哀愁に満ちたグルーヴに着目。SNS上でのサンプリングやカバー動画の急増を皮切りに、単なる懐メロの領域を脱し、普遍的なソウルミュージックとしての地位を再確立したのだ。