「無駄なコストを削るのが市場経済の鉄則であるはずなのに、なぜブルシットジョブは淘汰されないのか」という疑問が生じます。特に日本企業においてこの現象が根深く蔓延している背景には、独自の雇用慣行と組織力学が関係しています。
第一の理由は、メンバーシップ型雇用と「雇用の維持」のプレッシャーです。解雇規制が厳しい環境下では、業績悪化やデジタル化で本来の仕事がなくなった人員に対しても、何らかの「業務」を与え続けなければなりません。その結果、社内調整や形式的な委員会といった人工的な仕事が次々と生み出されます。
第二に、「減点主義」と「責任の分散構造」です。多くの伝統的企業では、新しい価値を生み出す加点よりも、ミスをしない減点回避が評価されます。1つの施策を通すために5重6重の承認印が必要となり、リスクヘッジのためだけに作られる膨大な比較資料や社内レビューが常態化します。この稟議文化こそが、無数の「書類作成係」や「尻ぬぐい」を養う温床です。
さらに2026年現在、DX(デジタルトランスフォーメーション)やAIツールの形骸化が新たなブルシットを生み出しています。業務を自動化するはずのツールを導入した結果、「ツールの入力内容をチェックする会議」や「AIの出力を手作業で整形する作業」が新たに発生し、作業量は減るどころか増大している現場が散見されます。