大相撲の歴史を語る上で欠かせないのが、伝統ある年寄名跡をめぐる継承の物語だ。「北陣」という由緒ある名跡の背後には、師弟や部屋の垣根を越えた人間模様と信頼の絆が存在する。
かつて土俵を沸かせた元幕内・天鎧鵬貴由が親方としてこの名跡を襲名し、協会の屋台骨を支えてきた経緯は記憶に新しい。その一方で、この名跡の権利関係を巡っては、端正な顔立ちと卓越した技能で角界屈指の人気を誇る遠藤聖大の存在が常にクローズアップされてきた。
年寄名跡は単なる肩書きではない。角界に残って弟子を育成し、相撲道を後世へ伝えるための神聖な資格である。現役力士として土俵に上がり続ける遠藤と、指導者として名跡を守り職務に奔走してきた歩み。そこには、外部からは見えにくい深い敬意と、将来の相撲界を見据えた暗黙の了解が流れている。名跡継承の裏にある緻密な人間関係のドラマこそ、大相撲が持つ尽きない魅力の一つだ。