運行遅延を恐れるあまり、ドライバーや小規模事業者の間でまことしやかに囁かれているのが、トラック警告灯リセット消し方の真相です。インターネット掲示板やSNS上では「バッテリーのマイナス端子を外して15分放置すれば警告灯がリセットされる」「安価な市販OBD2リーダーでエラーコードを強制消去すれば走り続けられる」といった裏ワザ情報が散見されます。
大手トラックディーラーのサービス統括責任者は、こうした行為に対して強い警鐘を鳴らしています。近年のいすゞトラックは、高度な車載診断機(OBD)規格に完全に移行しており、バッテリーを遮断してもECU内部の不揮発性メモリーに刻まれた「フリーズフレームデータ(異常発生時のエンジン回転数、冷却水温、車速、ターボ過給圧等の克明な記録)」は一切消去されません。それどころか、安易に電源を遮断することでナビゲーションやデジタルタコグラフの設定、ミリ波レーダーの学習値が初期化され、予期せぬ二次故障を誘発する恐れがあります。
さらに深刻なのが、ブレーキシステム警告灯点灯の経緯を誤認するケースです。エルフなどの小型車で主流の油圧ブレーキでは、ブレーキパッドが限界まで摩耗するとキャリパーピストンが押し出され、リザーバータンク内のフルード油面が急降下して警告灯が点灯します。このとき「単にブレーキオイルを足して警告灯を消した」場合、摩耗したパッドがバックプレートまで削り、最終的にローターを粉砕して大事故を招く事例が報告されています。また、フォワードやギガに採用されている空気式(フルエア)ブレーキでは、配管の亀裂やドライヤーの凍結によるエア漏れが原因で警告灯が点灯します。警告灯を単なる「消灯させるべき邪魔な光」と捉え、背後にある物理的破損から目を逸らす行為は、運行停止以上の破滅的な損害をもたらします。