日本ペインクリニック学会等の現場報告や各種コミュニティの相談事例を検証すると、多くの患者が「痛みの迷路」に迷い込んでいる実態が浮き彫りになります。SNSや知恵袋、患者コミュニティには、次のような悲痛な証言が溢れています。
「整形外科でレントゲンを撮っても『骨には異常がない』と言われ、湿布を出されるだけだった」「整骨院に半年通ったがピリピリ感は全く消えず、夜も眠れずに精神的に追い詰められた」――こうした声は氷山の一角に過ぎません。なぜ神経障害性疼痛はここまで「治らない」と嘆かれるのでしょうか。
最大の要因は、「受診科目の不一致による診断の遅延」です。骨の異常を探す一般的な整形外科や、感染症を診る一般内科では、微細な末梢神経の障害が見落とされがちです。適切な確定診断が下されないまま数カ月が経過すると、神経線維の可塑的変化(不可逆的な変形)が生じ、信号を中継する脊髄や脳のシナプス結合が組み換わってしまいます。
さらに深刻なのが、痛みが痛みを呼ぶ「心理・社会的要因の悪循環」です。原因不明の痛みが続くことで、患者は「このまま一生歩けなくなるのではないか」という破局的思考に陥ります。恐怖や不安によって交感神経が過剰に緊張すると末梢血管が収縮し、神経の虚血が進行します。同時に、脳内で痛みをブロックするはずの「下行性疼痛抑制系」の機能が著しく低下し、本来なら感じない程度の信号まで激痛として脳が知覚してしまうのです。痛みが治らない背景には、神経の器質的損傷だけでなく、中枢神経系におけるブレーキ機能の破綻が深く絡み合っています。