ネットの知恵袋や育児SNSで頻繁に交わされているのが、「抱っこしたときに赤ちゃんの足の付け根から音が鳴る」という相談です。検索窓に股関節ポキポキ音赤ちゃんと打ち込み、眠れぬ夜を過ごす親御さんも少なくありません。
しかし、小児整形外科医の共通見解として、指を鳴らしたときのような「プチッ」「ポキッ」という軽いクリック音は、靭帯や腱が成長途中の柔らかい骨の上を滑走する際に生じる生理的な現象であることがほとんどです。医師が診察時に警戒するのは、骨頭が臼蓋を乗り越えて脱臼・整復される際の手応えを伴う「カクッ」「ゴクッ」という鈍い整復感(Ortolaniサイン)であり、耳で聞こえる軽微な関節音の多くは病的な脱臼とは無関係とされています。
同様に、太もものしわについても誤解が蔓延しています。赤ちゃんの体型はふくよかで、寝相や皮下脂肪の付き方によって左右のしわの位置が異なることは日常茶飯事です。日本小児整形外科学会の統計資料でも、しわの非対称性だけで脱臼と診断される割合はごく一部にとどまります。「しわが違うから脱臼に違いない」と思い詰める必要はありません。肝心なのは、しわの非対称性に加えて「開排制限があるか」「足の動きに左右差があるか」という複合的な視点を持つことです。