インターネット上で流布している「桃の美味しい見分け方」には、科学的根拠を欠いた都市伝説がいくつか紛れ込んでいます。その筆頭が「産毛(うぶげ)がびっしり生えているほど甘い」という言説です。
確かに、収穫直後の新鮮な桃には細かな産毛が密生しており、鮮度を示すバロメーターにはなります。しかし、産毛の密度と果肉の糖度には直接的な相関関係はありません。むしろ、風雨から実を守るための防御機能であり、品種によっては元から産毛が薄いものもあります。産毛の有無だけに囚われると、糖度が低く未熟な個体を掴まされるリスクがあります。
もう一つの重大な盲点が「傷んだ桃の見分け方」です。店頭や購入後の桃が「完熟」なのか「傷んでいる(腐敗)」なのかを見極めるには、以下の3つの境界線を観察してください。
第1に「色の変化」です。正常な熟成による果肉の軟化は乳白色から淡いピンク色を保ちますが、打ち身や内部腐敗が起きている個体は、果皮の外側からでも透けて見えるほど暗い茶褐色に変色します。特に果軸(枝の付け根)周辺が黒ずんでいるものは、軸から侵入した灰色かび病などの菌が繁殖している恐れがあります。
第2に「香りの質」です。甘く芳醇なピーチのアロマではなく、ツンと鼻を突く「ワインのようなエタノール臭」や「酸っぱい発酵臭」が漂っている場合、果肉の内部で糖が酵母によって分解され、発酵が始まっています。この状態の桃は果肉が茶色く繊維化し、食べてもピリピリとした刺激や異味を伴います。
第3に「果皮の質感」です。完熟した桃は果皮にピンとした適度なハリがありますが、過熟や鮮度劣化を起こした桃は、果皮がシワシワに縮み、水分が抜けて弾力を失っています。こうした個体は甘みよりもエグみが勝るため、生食には適しません。