読者が重松作品に求める最大の魅力といえば、やはり「大人の涙腺を崩壊させる圧倒的な情動」です。作中で描かれるのは、決して理想化された完璧な家族ではありません。感情のすれ違い、言えない本音、不器用さゆえの衝突といった、誰の日常にもあるリアルな痛みです。
屈指の泣ける本として語り継がれる『とんび』では、妻を不慮の事故で亡くした頑固親父・ヤスが、周囲の温かい助けを借りながら息子・アキラを育て上げます。父親としての葛藤や、息子の巣立ちを見守る切なさは、親世代はもちろん、子どもの立場である読者をも深い感動で包み込みます。
妻を亡くした父親と幼い娘の成長を10年にわたって描いた『ステップ』も外せません。再婚への躊躇や周囲との関係性など、一歩ずつ前に進もうとする登場人物たちのひたむきな姿は、静かな涙を誘います。重松清の家族小説おすすめを探しているなら、この2作は外せない選択肢です。