「苗を植えて花が咲いたから、元気づけるために肥料を与えた」という初心者の善意は、トマトにとっては深刻な生育障害の引き金となります。トマトの栽培サイクルにおいて、第一花房着果と追肥のタイミングには密接な植物生理学的ルールが存在します。
植物には、茎や葉を伸ばす「栄養生長」と、花を咲かせて実を太らせる「生殖生長」という2つの成長モードがあります。定植から最初の開花期にかけて、トマトは自分の体を大きくする栄養生長に全力を注いでいます。この段階で土壌中に過剰な窒素分が存在すると、植物は「実を作って子孫を残す必要がない」と判断し、茎葉ばかりを異常発達させて花を自ら振り落としてしまいます。この悪循環を断ち切る唯一の防波堤となるのが、一番最初に咲いた花(第一花房)の結実です。
栽培の成否を分ける合図こそが、果実が直径3cm前後に達するピンポン玉大の目安です。第一花房の果実がこのサイズまで肥大すると、植物の体内では生殖生長への不可逆的なスイッチが入り、光合成産物や根から吸い上げた養分が果実へ最優先で送り込まれるようになります。このタイミングに達して初めて、株全体の活力を維持するための最初の追肥が有効に機能するのです。
一方、大玉トマトと異なり一度に多くの実をつけるミニトマトの場合、ミニトマト追肥のタイミングは大玉よりもやや早く、第一花房の実がパチンコ玉大から小豆大程度に膨らみ、第二花房の花が開花した段階で施用するのがセオリーとされています。果実のサイズに応じた植物の代謝変化を見逃さない観察眼が求められます。