1968年10月、社会現象を巻き起こした「ザ・フォーク・クルセダーズ(通称フォークル)」は、わずか1年間の限定プロ活動を終えて解散しました。加藤和彦氏、北山修氏とともにメンバーとして熱狂の渦中にいたはしだのりひこ(本名:端田宣彦)氏は、当時23歳。巨大な熱狂が去った後の喪失感のなかで、自らの音楽的アイデンティティを確立するための挑戦に乗り出します。
はしだ氏が目指したのは、単なるコミックソングや政治的なプロテストソングではなく、美しい旋律と繊細なアンサンブルを持つ「日本のカレッジ・フォークの洗練」でした。そこで声をかけたのが、アマチュア時代からの盟友であり、確かな歌唱力を持っていた杉田二郎氏、同志社大学の後輩でパーカッションを担当した越智友嗣氏、そして類まれなベースセンスと端正なマスクで注目されていた20歳の現役大学生、井上博氏の3名でした。
グループ名は、敬愛するクラシックの作曲家フランツ・シューベルトと、「シューベルト達」を掛け合わせた「はしだのりひことシューベルツ」と命名。フォークル時代のコミカルなイメージを払拭し、アコースティック・コーラスグループとしての純粋な音楽性を追求する布陣がここに完成しました。
デビュー曲として用意されたのが、はしだ氏自身が作曲を手掛けた『風』でした。メロディの美しさを信じたはしだ氏は、かつての盟友である北山修氏に作詞を依頼。こうして、1960年代末の混沌とした世相に一陣の清涼な風を吹き込む名曲が産声を上げました。