『シュタインズ・ゲート』が傑作と称される最大の理由は、序盤に散りばめられた「滑稽な厨二病の言動」のすべてが、後半に向けて怒涛の感動を生み出す伏線として回収される構造美にあります。
物語の冒頭において、「エル・プサイ・コングルゥ」は岡部倫太郎の痛々しい奇行の象徴として描かれます。電源の入っていないガラケーを耳に当て、「ああ、俺だ。機関の妨害が入った……エル・プサイ・コングルゥ」とつぶやく姿に、ヒロインの牧瀬紅莉栖は冷ややかな視線を向け、幼馴染の椎名まゆりだけが優しく微笑みかけていました。
しかし、タイムリープを幾度となく繰り返し、仲間の死を何度も目撃する過酷な運命の中で、この無意味だったはずの言葉は決定的な意味を持ち始めます。
無数に分岐する世界線の中で、岡部倫太郎の記憶だけは「リーディング・シュタイナー」によって維持されますが、周囲の仲間たちにとって岡部との記憶は世界線変動のたびにリセットされます。孤独な孤独な戦いの中で、彼が自分自身の正気とアイデンティティを保ち続けるための呪文が、まさに「鳳凰院凶真」としてのペルソナであり、電話を切る際の「エル・プサイ・コングルゥ」だったのです。
さらに物語のクライマックス、過去の自分を騙し、誰も犠牲にならない「シュタインズ・ゲート世界線」を目指す最終ミッションにおいて、未来の岡部から送られてきたメッセージの末尾に記されていたのもこの言葉でした。「意味のないはずのハッタリ」が「世界を救う作戦完了の確信」へと反転する瞬間は、本作屈指のカタルシスを視聴者に与えます。