ネット上の掲示板やSNSでは、「荒川の河川敷なのに、なぜビオトープの池だけ釣りが全面的に禁止されているのか」「ブラックバス釣りのポイントだった場所が締め出されたのはなぜか」といった疑問や不満が散見されます。しかし、荒川ビオトープ釣り禁止の理由には、現場で長年繰り返されてきた悲劇的な実態があります。
最大の理由は、放置された釣り糸や釣り針による野鳥への致死的被害です。保全ボランティアの巡回手記や活動記録には、釣り糸が脚に絡まって壊死したサギ類や、ルアーの針を飲み込んで命を落としたカワセミの痛ましい救護事例が生々しく記されています。また、釣り人が水際へ踏み込むことで、足元の泥中に生息する絶滅危惧種の幼虫や脆弱な湿地性植物の新芽が無慈悲に踏み潰されてしまう問題も深刻でした。
さらに、外来種駆除の経緯と真相もネット上では誤解されがちです。「行政が税金を使って無駄な駆除をしている」といった冷笑的な言説も見られますが、実態は全く異なります。かつて荒川のワンドや止水域は、密放流されたオオクチバス(ブラックバス)やブルーギル、繁殖力の強いアメリカザリガニによって在来の魚類や水生昆虫が壊滅的打撃を受けました。
荒川上流河川事務所や地域の保全団体は、毎年のように大規模な網捕獲や泥上げを実施し、外来生物の密度を力技で押し下げてきました。加えて陸域では、特定外来生物のアレチウリやオオキンケイギクが固有植物の自生地を覆い尽くす脅威となっており、年間延べ数千人の市民ボランティアが炎天下でツルを手作業で引き抜く泥臭い闘いを続けています。釣り禁止措置は、外来魚の新たな密放流ルートを断ち、この途方もない保全活動の成果を不可逆的に破壊させないための「絶対防衛ライン」なのです。