えこひいきの毒性は、職場という公の場にとどまりません。より根深く、個人の人格形成に深刻なトラウマを刻み込むのが、「家庭内における親(特に母親)からの兄弟びいき」です。
家族社会学および臨床心理学の現場では、親が特定の子どもだけを過剰に可愛がり、別の子どもを冷遇・搾取する家庭の歪みが「機能不全家族」の典型例として指摘されています。こうした環境下では、以下のような過酷な役割固定が発生します。
親の理想を投影され、何をやっても称賛される「愛玩子(ゴールデンチャイルド)」と、親の不満やストレスのはけ口にされ、兄弟間の不都合をすべて押し付けられる「搾取子・身代わり(スケープレゴート)」の二極化です。母親が無意識のうちに、自分に都合の良い従順な子や、容姿・学歴で自慢できる子ばかりを溺愛し、自立心の強い子や手のかかる子を疎外する構図です。
冷遇された側の子どもは、「自分には価値がない」「愛されるためには条件を満たさなければならない」という強迫観念を抱え、大人になっても他者との間に健全な「心理的バウンダリー(境界線)」を引けなくなります。一方で、ひいきされて育った子どももまた、過度な特権意識を植え付けられた結果、社会に出てから挫折に極めて弱いパーソナリティを形成しがちです。兄弟間に決定的な不信感と確執(カイン・コンプレックス)を植え付ける家庭内のえこひいきは、世代を超えて連鎖する心理的暴力に他なりません。