一本釣り漁師の懐事情は、完全に自然相手の完全歩合制だ。マグロが獲れなければ売上はゼロ。出港するたびに高額な燃料代だけが消え去り、月に数十万円単位の赤字を背負い込むことすら日常茶飯事の世界である。山本秀勝氏のように一人で小型船を操る一本釣り漁師の場合、総水揚げ高と実際の「手取り額」の間には大きな開きが生じる。
大物が複数本揚がる豊漁の年であれば、年間水揚げ高は1,000万円から1,500万円クラスに達すると推計される。だが、そこから引かれる経費の重みが漁師を苦しめる。船の燃料(A重油)代、ソナーや魚探など電子機器の修繕費、エサ代、船体保険料、さらには大間漁業協同組合への水揚げ手数料(概ね10〜15%)や税金が容赦なく引かれていく。結果として、いくら当たり年であっても実質的な年間手取り額は300万〜500万円程度に留まるのが現実だ。逆に記録的な不漁に見舞われれば、手取りは100万円を切るか、最悪の場合は完全な赤字へと転落するリスクと常に隣り合わせである。