稲荷山を歩いていると、至る所で目に仕えるのが表情豊かなキツネの石像だ。稲荷大神の使いである「眷属(けんぞく)」としてのキツネは、鍵や宝珠、稲穂などを口に咥え、参拝者を見守っている。
しかし、稲荷山の本質はキツネそのものよりも、山全体に広がる何万基もの「御塚」にある。江戸時代から近代にかけて、個人や企業がそれぞれの祈願や感謝を形にするために建立したこれらの石碑は、日本独特の神仏混淆の名残と「神我一体」の精神を象徴している。山頂へ向かうにつれて強まる線香の香りや、灯籠の揺らめく炎は、今も生き続ける信仰の熱量をストレートに伝えてくる。