読者の記憶に鮮烈に残る「天才ですから」というセリフですが、作品全体を通じて何度もバリエーションを変えて登場します。その中でも決定的なマイルストーンとなるのが、物語の「最初」と「最後」です。
初出となったのは、原作単行本第1巻・第1話『桜木君』です。中学時代に50回連続でフラれ、湘北高校に入学したばかりの不良少年・桜木花道は、廊下で赤木晴子から「バスケットはお好きですか?」と声をかけられます。下心全開でバスケットボール部への入部を即決した花道は、晴子に驚異的な身体能力を褒められた際、調子に乗って「天才ですから」と言い放ちました。この段階での言葉には何の裏付けもなく、純度100%のハッタリとおどけに過ぎませんでした。
対照的なのが、原作単行本最終巻(第31巻)のラストシーンです。インターハイ2回戦で前年度王者・山王工業を激闘の末に破るも、背中に選手生命を脅かす重傷を負った花道。リハビリ療養先の海岸で、晴子からの手紙を読み終えた花道のもとに、日本代表のユニフォームを着た流川楓が現れます。ライバルの姿に刺激を受け、トレーナーから「今日のリハビリはきついぞ」と告げられた花道が、誇らしげに振り返りながら物語の最後のコマで放ったのが「リハビリ王ですから」「天才ですから」でした。