小瀬村の音楽を特徴づける最大の要素は、「沈黙」の扱い方にある。ひとつの音が鳴り響き、空間に溶けて消え去るまでの時間。彼はその余白を恐れない。むしろ、音が消えゆく瞬間にこそ、もっとも純粋な感情が宿ると信じているかのようだ。
フェルトを挟んだピアノのくぐもったトーン、木製の鍵盤が擦れるかすかな摩擦、ペダルを踏み込む際の重量感。スタジオ内のマイキングを極端に近づけ、アコースティック楽器が持つ生々しいテクスチャーをありのままに捉える。この妥協なき音響設計によって、リスナーはまるで耳元でピアノが演奏されているかのような、親密でプライベートな錯覚を覚えるのだ。