「髪の色を抜く」と一口にいっても、対象が生まれ持った自毛の黒さ(メラニン色素)なのか、それとも過去に染めたヘアカラーの人工色素(酸化染料)なのかによって、使用すべき薬剤は根本から異なります。この選択を誤ると、髪に過度な負担をかけるばかりか、希望の明るさに到達しない原因となります。
まずブリーチ(脱色剤)は、アルカリ剤によって毛髪のキューティクルを開き、過酸化水素と過硫酸塩の酸化作用によって毛髪内部の「ユウメラニン(黒〜褐色)」および「フェオメラニン(黄〜赤色)」を強力に破壊・分解する仕組みです。バージン毛を一気に14〜16トーン以上の金髪へと引き上げるパワーを持ちますが、毛髪の主成分であるケラチンタンパク質にも一定の負荷がかかります。
一方で脱染剤(カラーリムーバー)は、メラニン色素はほとんど削らず、毛髪内部に結合している「人工染料の分子結合」のみを化学的に切断・溶出させる薬剤です。就活や冠婚葬祭で一時的に施した黒染め落としには、ブリーチではなく脱染剤を選択するのが現代のセオリーです。ブリーチで黒染めを落とそうとすると、自毛ばかりが脱色されて人工染料が残留し、激しい「赤ムラ」を引き起こすリスクが高まります。
市販およびサロンで流通している脱色剤・脱染剤の種類と特徴を整理すると、以下の3タイプに大別されます。
1. パウダータイプ(粉末ブリーチ):
過硫酸アンモニウムや過硫酸塩を高濃度で配合した最もリフト力が高いタイプ。1回で明度を大幅に引き上げられますが、反応速度が極めて速いため、素早い塗布技術が求められます。
2. クリーム・エマルジョンタイプ:
油分や保護成分が配合されており、パウダーに比べて塗布しやすく乾燥しにくいのが利点です。リフト力はマイルドですが、部分的なハイライトやリタッチに向いています。
3. 還元型脱染剤:
酸性〜中性領域で働き、酸化染料のみを安全に還元・無色化します。毛髪内部のメラニンを破壊しないため、自毛本来の明るさをキープしながら黒染め前のベースに戻すことが可能です。