合格者たちが歩むリアルな現場の軌跡を追うと、外部から見える「偏差値93の天才」という華やかなラベルとは大きくかけ離れた、過酷な現実と葛藤が浮かび上がってきます。
合格体験記や関係者への取材から得られた証言を紐解くと、彼らの多くが小学生時代から1日10時間以上の学習を日常化させ、私生活のあらゆる娯楽を削ぎ落として受験に打ち込んできた歴史を持っています。「天才肌で勉強しなくても解ける」と評される一部の特異な生徒を除けば、大部分は圧倒的な努力量を徹底して継続できる自己管理の鬼です。
ある理三合格者は、自著やインタビューの中で次のように吐露しています。
「周囲からは何もしないで合格したように見られがちだが、中学・高校の6年間で解いた問題集の厚みは自分の背丈をゆうに超えていた。模試で偏差値80を超えても、本番でミスをしたら終わりだという強迫観念に毎日苛まれていた」
さらに見逃せないのは、「東大医学部に入学した後の挫折」です。全国模試で常に1桁順位を取り、地元では「神童」と持て囃されてきた新入生たちが、本郷キャンパス(医学部)に進学した途端、全員が自分以上の怪物である現実に直面します。
大学3年次以降に本格化する医学専門課程では、膨大な解剖学の用語暗記や過酷な臨床実習が待ち受けています。かつて模試で競い合った数学的ひらめきや偏差値の高さは、臨床現場におけるコミュニケーション能力や膨大な知識の整理力の前ではほとんど意味をなしません。燃え尽き症候群に陥ったり、進級試験で留年を経験したりする理三生が一定数存在することは、医学教育の現場ではよく知られた事実です。