患者が口を揃えて訴えるのが、「帯状疱疹 片側 背中の痛み」という奇妙な症状です。背中の筋肉を痛めた覚えがないにもかかわらず、皮膚の表面が火傷したように熱っぽくなったり、衣類が擦れるだけで電気が走るような痛みを自覚します。
この特異な現象の正体は、子どもの頃にかかった「水ぼうそう(水痘)」の病原体である水痘・帯状疱疹ウイルス(VZV)です。日本人の成人約9割が体内に保有しているとされるこのウイルスは、水ぼうそうが治癒した後も体内から完全に排除されるわけではありません。背骨のすぐそばにある「後根神経節」と呼ばれる神経の根元に、生涯にわたって眠り続けています。
加齢や過労、強い精神的ストレスなどによって免疫細胞の監視網が弱まると、ウイルスは数十年の眠りから覚醒します。ウイルスは一本の神経線維を伝って皮膚表面へと移動しながら神経細胞を破壊。この破壊工作によって神経痛(ピリピリ感・チクチク感)が発生し、神経の先端である皮膚の表面にウイルスが到達した瞬間に、目に見える紅斑や水ぶくれが吹き出します。人間の神経は背骨から左右に分かれて帯状(デルマトーム)に皮膚へ伸びているため、ウイルスが活性化した「片側の神経1本分」の領域にだけ症状が限定されるのです。