三鷹駅南口の地下飲食店街「味の街」に一歩足を踏み入れると、どこか懐かしいガラと醤油の香りが鼻腔をくすぐります。のれんをくぐると迎えてくれるのは、厨房を囲むカウンター席の活気と、店主の温かな平ざる捌きです。「中華そば みたか」の魅力は、単なる「美味しいラーメン店」という枠組みを超え、昭和の大衆酒場と町中華が融合した唯一無二の空間体験にあります。
この店を語る上で絶対に外せないのが、前身である「中華そば 江ぐち」の存在です。1953年に創業した江ぐちは、作家・太宰治ゆかりの地でもある三鷹で半世紀以上にわたり文士や学生、市井の人々に愛されてきました。しかし2006年5月、二代目店主の急逝により惜しまれつつ閉店を余儀なくされます。
その歴史の灯を消してはならないと立ち上がったのが、江ぐちで長年厨房を任されていた高橋一弘氏(現店主)でした。常連客やファンの惜しみない支援を受け、同年のうちに屋号を「中華そば みたか」と改め、伝統の味・店舗・什器をそのまま受け継ぎ再出発を果たしたのです。現在も厨房に漂う空気感には、半世紀以上にわたって三鷹の街で紡がれてきた人情と食文化の歴史が色濃く息づいています。