神奈川県わかりやすい地図を眺めたとき、多くの人が直面するのが「直感的なイメージと実際の市町村配置のズレ」です。メディアや不動産広告で頻繁に用いられる呼称と、実際の行政境界には大きな乖離が存在します。
筆頭に挙げられるのが、長年議論が続く「湘南エリアの定義問題」です。一般的に全国的なイメージとしての湘南は江の島を擁する藤沢市や茅ヶ崎市、あるいは鎌倉市周辺を指す傾向にあります。しかし、県の行政区分上の湘南地域には内陸の秦野市や伊勢原市が含まれる一方、鎌倉市や逗子市は行政上「横須賀三浦地域」に分類されます。さらに国土交通省の「湘南ナンバー」管轄区域を見ると、平塚市や藤沢市から西端の湯河原町までを含む計14市町にまたがっており、「文化的な湘南」「行政上の湘南」「陸運上の湘南」で境界線が大きく異なるという三重構造が生じています。
また、東京都町田市と神奈川県の境界関係も地理愛好家や住民の間で度々注目されるポイントです。地図上で見ると、町田市は横浜市・川崎市・相模原市・大和市に深く包囲されるように南へ突出しています。境川沿いでは市街地や住宅の敷地を都県境が横切るケースが多数存在し、「道路を渡ると東京都、戻ると神奈川県」というモザイク状の空間が形成されています。町田駅周辺の商業圏が相模原市民や横浜市北部住民の生活インフラとして機能している実態は、地図上の県境を越えた有機的な都市結合の典型例です。