ピッツァ作りにおける心臓部、それは間違いなく薪窯だ。450度以上に達する高温の窯内部で、ナポリから取り寄せた薪がパチパチと音を立てて弾ける。一見すると豪快な作業に見えるが、内部ではミクロン単位の温度変化を読む鋭い観察眼が求められる。
床面の温度、天井からの放射熱、そして空気の流れ。職人は長年の経験と感覚を研ぎ澄まし、生地を投入するベストな瞬間を見極める。窯の中に滑り込ませた生地は、一瞬で膨らみ始め、独特の焦げ目「コルニチョーネ(縁)」を形成していく。この数分にも満たない焼きのプロセスこそが、外はサクッと香ばしく、中は驚くほど水分を保ったモチモチの食感を生み出す秘密だ。