言葉による説得や反省文が無力であるならば、どうすればよいのか。宮口氏が少年院で開発し、現在は全国の学校や放課後等デイサービスへと普及しているのが、認知機能強化トレーニング「コグトレ(Cog-Tr)」です。
コグトレは、認知機能の根幹を支える以下の5つの要素を、ゲーム感覚のペーパーワークや身体運動を通じて底上げすることを目指します。
- 覚える(記憶):短期記憶(ワーキングメモリ)を鍛え、聞いた指示を忘れない力を養う。
- 数える(注意集中):複数の刺激の中から特定のルールを見つけ出し、注意を維持する。
- 写す(知覚統合):点つなぎや図形の模写を通じ、目と手の協調運動、空間認識力を向上させる。
- 見つける(言語理解):共通項や相違点を発見し、抽象的な概念を整理する力をつける。
- 想像する(処理速度・推論):回転した図形の形や、他者の視点から見える情景を脳内でイメージする。
実際に少年院や教育支援現場での導入データによると、点つなぎすら満足にできなかった少年が数か月のトレーニングを経て図形を正確に模写できるようになり、それに伴って感情の爆発(キレやすさ)が目に見えて減少した実例が多数報告されています。「見る力」「聞く力」が整うことで、初めて周囲の状況を客観的に認識できるようになり、他者とのコミュニケーションが成立し始めるのです。