1987年、ひとつの歌集が出版界の常識を鮮やかに打ち破った。『サラダ記念日』である。短歌といえば、どこか難解で歴史の教科書に並ぶ古風な文芸というイメージが強かった時代。そこに突如として現れた口語体の三十一文字は、若者を中心に爆発的な支持を集め、280万部を超える大ベストセラーとなった。
「この味がいいねと君が言ったから七月六日はサラダ記念日」。あまりにも有名なこの一句に代表されるように、身近な日常風景や等身大の恋心を素直な言葉で切り取るスタイルは、まさに現代短歌の扉を大きく開け放つ画期的な出来事だった。敷居が高かった歌壇の風気を一変させ、誰にとっても身近な表現形式へと解放した功績は計り知れない。