2人の出会いは、昭和の音楽界における最もロマンチックな逸話のひとつとして語り継がれています。1970年代中盤、すでに若手シンガーとして注目されていた石川セリに、陽水が一目惚れに近い強い関心を抱いたことが発端でした。
決定的な契機となったのが、1977年に石川セリが発表したシングル『ダンスはうまく踊れない』です。当時、陽水が彼女の気を引くために、わずか30分ほどで作詞・作曲を手掛け、プレゼントしたというエピソードはあまりにも有名です。「ダンスなんてうまく踊れないけれど、あなたとなら」という不器用な恋情を情緒豊かに描いたこの楽曲はスマッシュヒットを記録し、2人の心理的距離を一気に縮めることとなりました。
一方で、陽水には一度の婚姻歴がありました。メガヒットアルバム『氷の世界』をリリースした直後の1974年に一般女性と結婚したものの、爆発的なブレイクによる過密スケジュールや私生活の急激な変化、精神的なすれ違いが重なり、1976年に離婚が成立しています。激動の時期を経て心機一転した陽水は、自らの音楽的インスピレーションを刺激し続ける石川セリと深い絆を育み、1978年に再婚を果たしました。