物語の筋立ては極めてシンプルである。山奥にある祖母の古い屋敷に身を寄せることになった少年。高く暗い天井、太い梁(はり)が渡された空間の中で、少年は祖母から「上を見なければ怖くない」と諭される。しかし、人間の好奇心と恐れは裏腹だ。視線を上げた少年の目に飛び込んできたのは、暗がりからこちらを凝視する「おじさんの顔」だった。
本作のネタバレであり恐怖の核心は、怪異の認識が不可逆である点にある。一度「そこにいる」と気づいてしまえば、視線を逸らそうが場所を変えようが、存在は確定する。ページをめくるごとに顔は近づき、ラストシーンでは読者自身の頭上へと物理的な圧迫感を持って侵入してくる。救いも解決も提示されないまま唐突に訪れる終幕は、読者を逃げ場のない絶望へと置き去りにする。