日本のポップカルチャーにおいて、アヒル口を不動のトレンドへと押し上げた決定的な存在といえば、元AKB48の板野友美さんです。2010年前後、グループの黎明期から国民的ブレイク期にかけて、彼女が見せた小悪魔的でキュートな口元は「ともちんリップ」と呼ばれ、同世代の女性たちの間で模倣ブームを巻き起こしました。当時の特番インタビューや自著・手記でも、自身のトレードマークとして口元の魅せ方を自覚的に磨き上げていた背景が語られています。
その後、アヒル口の芸能人の系譜は時代とともに洗練されていきました。石原さとみさんのような潤いと肉厚さを兼ね備えた大人のリップ、鈴木愛理さんのような健康的でポジティブな笑顔を象徴する口元、あるいは田中みな実さんのように「あざとさ」を自らの武器として肯定的に昇華させたタレントたちの存在が、アヒル口のパブリックイメージを「ただ媚びる口元」から「自己プロデュースに長けた自立した美しさ」へとアップデートさせました。
2026年現在のトレンドは、かつてのような「あからさまに突き出すアヒル口」から、真顔でも口角がわずかに上向きに見える「ナチュラルな多幸感フェイス」へと移行しています。記号的なポーズとしての唇ではなく、顔全体の品格や幸福感を高める要素として再評価されているのです。