150台以上の車が一瞬にして灰燼に帰したことで、最大の焦点となったのが「被害車両に対する損害賠償・補償問題」でした。
日本には明治時代に制定された「失火責任法(失火ノ責任ニ関スル法律)」が存在します。この法律により、火元となった車の所有者に「重大な過失(重過失)」が認められない限り、失火者は延焼先の被害に対して民事上の損害賠償責任を負わないと規定されています。整備不良が極端に悪質であったなどの明白な過失が立証されない限り、火元オーナーに全損害を請求することは法的に極めて困難でした。
その結果、多くの被害者は自らが加入している任意の「車両保険」を使って自己解決せざるを得ない厳しい現実に直面しました。しかし、車両保険に未加入だったユーザーや、年式が古く設定保険金額が低額だったユーザーは十分な補償を受けられず、大きな経済的打撃を被ることとなりました。
一方、施設管理者であるマルハン側に対しても施設欠陥(工作物責任)の有無が議論されましたが、法令基準を満たした駐車場構造であったため、法的な賠償義務を全面的に負う形にはなりませんでした。店舗側は避難誘導の迅速さや見舞金の支給、帰宅困難者への移動費用の支援など誠実な初期対応を行いましたが、全損害の完全補填とはならず、法制度の限界が浮き彫りとなりました。