インターネット上のレシピ検索では「プッタネスカ アンチョビなし」というキーワードが多く見受けられます。魚介特有の匂いが苦手な方や、ベジタリアン志向の方からの需要ですが、専門家の視点から見ると興味深い事実が浮かび上がります。
実は、発祥の地であるナポリ近郊の伝統的な家庭料理においては、「アンチョビを入れないプッタネスカ」こそが原点のひとつでした。かつてナポリの庶民街では、アンチョビすら手に入らない貧しい家庭が、庭先のトマトと保存がきくオリーブ、ケイパー、ニンニク、唐辛子だけでパスタを作っており、これを「マリナーラ(船乗り風)」のバリエーション、あるいは質素なプッタネスカとして日常的に食していました。
現代においてアンチョビを使わずに満足度の高いプッタネスカを作る場合、単にアンチョビを抜くだけでは旨味の厚みが不足します。その欠落を補うための優れた代替アプローチとして、現場のシェフたちは以下の工夫を推奨しています。
1. 水煮ツナ缶の代用:ツナの油漬けまたは水煮を少量加えることで、魚介系のイノシン酸を補完しつつ、アンチョビ特有のクセを抑えた親しみやすい味に仕上がります。
2. 刻みマッシュルームや乾燥椎茸の戻し汁:植物性原料のみで仕立てる場合、キノコ類のグアニル酸をソースに加えることで、アンチョビに匹敵するコクと奥行きが生まれます。
3. 隠し味の醤油・味噌(微量):発酵食品特有の熟成香を補うため、トマトを煮詰める段階で醤油を数滴落とす手法も、家庭料理の知恵として極めて有効です。