珈琲の味わいにおいて、上島珈琲店が他店と決定的に異なるのが抽出方法へのアプローチだ。一般的なカフェチェーンが採用するペーパードリップやエスプレッソマシン抽出とは異なり、同店は長年「ネル(布製フィルター)抽出」に強いこだわりを持ち続けている。
ネルドリップは珈琲の微小な粒子や油分(コーヒーオイル)を適度に通すため、舌触りが非常に滑らかで、コク深く芳醇な甘みと香りを引き出せる反面、布の管理が極めて難しく、抽出にも高度な技術を要するため大量出店するチェーンでの導入は不可能とされてきた。この壁を打ち破ったのが、親会社であるUCCグループの技術陣が開発した独自の「ダブルネルドリップ抽出機」である。
一度ネルドリップで抽出した濃厚な珈琲液を、新たな珈琲粉に再度通して二度抽出する。この工程を経ることで、雑味を極限まで抑えながら、ミルクや甘みを加えても決して負けない強靭なボディを持つ抽出液が完成する。この技術的裏付けがあるからこそ、看板メニューのブレンドやミルク珈琲が圧倒的な差別化を実現できているのだ。
企業史から紐解く「UCCとの違い」とブランドの立ち位置
街角でよく見かける「UCC」の看板や缶コーヒーと、上島珈琲店はどう違うのか。疑問を抱く読者も少なくないだろう。実のところ、上島珈琲店 UCCとの違いは、ブランドが担うミッションの差異にある。
缶コーヒーをはじめとする量販品を展開するUCC上島珈琲が「日常のあらゆる場面でのアクセシビリティ」を担うのに対し、上島珈琲店は創業者の名を冠し、「UCCグループが創業以来培ってきた喫茶文化の誇りと抽出技術の粋を結集したプレミアム業態」として2003年に誕生した。つまり、大衆向けマスプロダクトのノウハウを土台にしつつ、抽出から空間提供まで一切の妥協を排したフラッグシップとしての性格を持っているのである。