中島歩を語る上で避けて通れないのが、その特異なルーツです。彼は明治の文豪として名高い国木田独歩の玄孫(げんそん)にあたります。歴史の教科書に名を残す偉人の血を引いているという事実は、彼の持つ独特の文学的佇まいと無関係ではありません。
家系図を具体的に辿ると、国木田独歩の次女である柴田みどりさんが中島歩の曾祖母にあたります。柴田みどりさんの子供(中島歩の祖父母)を経て現在の両親へと血脈が受け継がれており、紛れもない直系の末裔です。また、モデルとして国際的に活躍する国木田彩良も同じく独歩の玄孫であり、中島歩とは親族関係(はとこ)にあたります。
しかし、中島歩自身はこの輝かしい血筋を売名に利用することを徹底して嫌ってきました。日本大学芸術学部を卒業後、オーディションを地道に受け続け、美輪明宏に見出されて舞台『黒蜥蜴』で本格デビューを果たした経歴が物語るように、実力主義の演劇界で己の肉体と声だけを武器に這い上がってきた叩き上げの表現者です。文学的気品は血筋由来のものかもしれませんが、役者としての重みは本人の血のにじむような研鑽の産物といえます。