ここから物語は、二人の英雄の内面的な対立へと突入します。戦場で血を流してきた廉頗にとって、口先だけで自分より上位に立った元・身分の低い藺相如の出世は到底受け入れがたいものでした。「会ったら必ず恥をかかせてやる」と公言する廉頗に対し、藺相如は病気と称して朝廷への出仕を控え、道で廉頗の車を見かけると路地に隠れてやり過ごすようになります。
この腰の引けた態度に失望した門客(部下たち)が暇乞いを申し出た際、藺相如が語った言葉が、本作最大のクライマックスです。
「あの獰猛な秦王ですら私は恐れなかった。廉将軍を恐れるはずがない。強大な秦が趙を攻めてこないのは、私と廉将軍の二人がいるからだ。今、二頭の虎が争えば共倒れになる。私が廉将軍を避けるのは、国家の急を先にして私怨を後にしているからだ」
この発言を伝え聞いた廉頗は、自らの狭量を恥じ入ります。そして上半身の衣を脱ぎ(肉袒)、背中に処罰用の荊(いばら)の鞭を背負って(負荊)、藺相如の屋敷の門前に平伏して謝罪しました(肉袒負荊)。
藺相如は快く廉頗を迎え入れ、二人は固く手を取り合いました。こうして「互いのためなら首を刎ねられても悔いはない」と誓い合う、真の盟友関係(刎頸の交わり)が誕生したのです。