アクロバティックな躍動感とは対照的に、静謐な空間で観客の心を掴んだのが、奏劇 vol.3「アリオーソ」をはじめとする挑戦的な作品群だ。生演奏の重厚な旋律が響く中、セリフの間や息遣いだけで物語を紡ぎ出す難易度の高い舞台において、彼の知性と感性が鮮烈にスパークした。
派手なギミックを削ぎ落とした空間だからこそ、彼が発する一言ごとの重みと繊細な感情の機微が際立つ。言葉と音が共鳴する瞬間、劇場には濃密な空気が満ちた。身体表現だけでなく、研ぎ澄まされた声の表現力をも兼ね備えていることを証明した記念碑的一作である。