なぜ地球の一周は、これほどまでに「約4万km」という端数のない美しい数値に収まっているのでしょうか。その理由は、自然の偶然ではなく人間が「地球の大きさ」をベースにして単位を作ったからに他なりません。
18世紀末、フランス革命期において度量衡の統一が議論された際、誰にとっても普遍的で不変の基準として選ばれたのが地球の子午線でした。1791年、フランス科学アカデミーは「北極点からパリを通り赤道に至る子午線弧長の1,000万分の1」を「1メートル」と厳格に定義しました。
北極点から赤道までは地球全周の4分の1にあたるため、1/4周が10,000,000メートル(1万km)となります。これを4倍した値、すなわち「1万km × 4 = 4万km」が地球の縦回りの円周になるよう設計されたのです。後年のより精密な測量技術によって地球がわずかに扁平であることが判明したため、現在の公認数値は約40,008kmとわずかな端数が出ていますが、本質的に「4万km」は人間の知恵が生み出した規格そのものといえます。
さらに歴史を遡ると、今から2200年以上も前の紀元前3世紀、古代ギリシャの天文学者エラトステネスが地球測定を成し遂げた経緯は驚異的です。エラトステネスは、夏至の日の正午にシエネ(現在のアスワン)では深い井戸の底まで太陽光が届き影が消える一方、はるか北にあるアレクサンドリアでは日時計の針に約7.2度(全円360度の50分の1)の影ができることに着目しました。
彼は「2つの都市の距離を50倍すれば地球全体の大きさが算出できる」と推論し、当時の歩測データから距離を割り出して、地球一周を約4万6,000km(諸説あり、現代換算で約4万〜4万6,000km)と算出しました。人工衛星も宇宙望遠鏡もない古代において、影の傾きと歩幅の記録だけで地球の大きさをほぼ言い当てていた事実は、人類史における知性の極致といえます。