ネット上では「何もしないで疲れるのは気合いが足りないから」「甘えではないか」といった心ない言説が散見されます。しかし、医学的な見地から言えば、これは明らかな誤解です。何もしてないのにしんどい病気として、真っ先に除外診断を行わなければならない疾患が複数存在します。
代表例が、先述の表にも挙げた隠れ貧血(フェリチン不足)です。一般的な定期健診で測定される「血色素(ヘモグロビン)」の数値が正常範囲であっても、体内の貯蔵鉄である「フェリチン」が枯渇している人が少なくありません。鉄分は細胞内のミトコンドリアがエネルギー(ATP)を産生する際の必須触媒であるため、貯蔵鉄が不足すると、どれだけ眠っても全身の細胞がガス欠を起こし、激しい倦怠感に見舞われます。
また、過度なストレスが長期間続くことで、抗ストレスホルモンであるコルチゾールを分泌する副腎が疲弊する副腎疲労症状も無視できません。「朝ベッドから起き上がるのに何十分もかかる」「日中はぼーっとしているのに夜遅くになると目が冴える」「急に甘いものやしょっぱいスナックを衝動的に食べたくなる」といった兆候は、副腎と視床下部・下垂体の連携(HPA軸)が乱れている典型例です。
さらに、休息を取っても全く回復せず、微熱や頭痛、関節痛を伴う状態が6か月以上続く場合は、指定難病にも関連する慢性疲労症候群(筋痛性脳脊髄炎)や甲状腺機能低下症、睡眠時無呼吸症候群などの疾患が隠れているリスクがあります。単なるサボりや性格の問題と片付けるのは、極めて危険な行為です。