レザージャケットの双璧として必ず比較対象に挙げられるのが、米陸軍航空隊(のちの米空軍)が採用した「A-2」と、米海軍・海兵隊が誇る「G-1」です。両者は一見するとクラシカルなミリタリーブルゾンという共通項を持ちながら、その設計思想は決定的な対極を成しています。
A-2がホースハイド(馬革)を主体とした硬質で直線的なフォルムと、ドットボタン留めのシャツカラーを持つミニマルな美学を貫くのに対し、G-1は徹底した運動性と船上での実用性を優先して作られました。最大の特徴は、背面に配された大型の「アクションプリーツ」と脇下のベンチレーション付きガゼットです。狭いコクピットで操縦桿を握り、急旋回や索敵のために上半身を激しく動かす海軍パイロットにとって、肩周りの突っ張りは集中力を削ぐ致命的な欠陥となります。G-1はこのプリーツによって、身体にジャストフィットさせながらも驚異的な腕の可動域を確保しました。
さらに、外見上のアイデンティティである「天然ムートンボア襟」は、吹き曝しの空母甲板上で首元からの寒風を遮断するための必然的な装備です。フロントファスナーの裏には「USN」のパンチングが施されたウィンドフラップが走り、海風の侵入を物理的にシャットアウトします。無駄を削ぎ落としたストイックなA-2に対し、荒れ狂う海の上でパイロットの生命を守るために機能を盛り重ねたG-1の重厚感こそが、現代の服飾ファンを惹きつける原動力となっています。