ネット上のQ&AサイトやSNSでは、「インフルエンザで休むなら有休を消化するのが当たり前」「熱があるのに無理して会社に行けば頑張りを評価される」といった誤った言説が横行しています。しかし、これらは労働法およびコンプライアンスの実態から完全に乖離した危険な思い込みです。
第1の盲点は、インフルエンザ有給強制違法性です。年次有給休暇の利用目的は労働者の自由意志に委ねられており(時季指定権)、会社側が「インフルエンザで休んだ5日間はすべて有給休暇として処理する」と一方的に指定することは、計画的付与制度に関する労使協定が締結されている場合を除き、労働基準法第39条に違反します。有給休暇を温存して無給の欠勤や休業手当受給を選択するか、満額支給のために有給休暇を使うかは、あくまで労働者本人が決める権利を持っています。
第2の盲点は、熱を隠して無理に出勤した労働者自身が負う処分リスクです。「休めない空気」に屈して高熱を押して出勤し、社内で集団感染を引き起こした場合、会社側から「感染防止規程違反」「職場の秩序を乱す行為」として就業規則違反に問われ、戒告や減給などの懲戒処分の対象にされるケースが現実に出始めています。「会社のために出勤した」という本人の自己犠牲的な主観は、コンプライアンスを重視する現代の労働環境では一切評価されず、かえって過失責任を問われる罠になり得ます。