『君の膵臓をたべたい』名言の真相|「偶然じゃない」に涙する理由

『君の膵臓をたべたい』名言の真相|「偶然じゃない」に涙する理由

『君の膵臓をたべたい』名言の真相|「偶然じゃない」に涙する理由の詳細解説を解説します。役立つ情報がチェックできます。

物語のクライマックス手前、多くの読者や観客の涙腺を完全に決壊させたのが、ヒロイン・山内桜良が発した「私たちが会ったのは、偶然じゃない。運命なんかでもない。あなたがしてきた選択と、私がしてきた選択が、私たちを会わせたの」という珠玉のセリフです。

このセリフの背景にあるのは、単なるセンチメンタリズムではありません。文芸評論家や心理学者が指摘するように、ここには哲学者サルトルの実存主義やアドラー心理学の根幹をなす「自己決定論」が鮮やかに息づいています。余命を宣告され、肉体が確実に死に向かっている桜良は、「死病に侵された運命の被害者」として受動的に生きることを断固として拒絶していました。病院で彼女が落とした『共病文庫』を「僕」が拾った出来事すら、彼女自身が文庫を外へ持ち出し、彼が周囲に無関心でありながら本を手に取ったという、互いの無数の主体的な選択が重なり合った結果にほかなりません。

運命という美しくも無責任な言葉で片付けるのではなく、「自分の人生はすべて自分が選んできた結果である」と言い切る姿勢。この覚悟こそが、死の恐怖に震えながらも笑顔を崩さなかった彼女の魂の矜持であり、他者との関係を拒絶していた「僕」の閉ざされた心を激しく揺さぶった理由なのです。

佐々木 一輝
著者

佐々木 一輝

Webメディアでの編集・執筆歴10年。読者の好奇心を刺激するストーリー作りを心がけています。