ネットの掲示板や一部の論調において、「ウイカは自分自身の強気なパブリックイメージに近い役しかできないのではないか」という穿った見方が散見されることがあります。しかし、これは明確な事実誤認です。
その証拠となるのが、NHKドラマ『舟を編む 〜私、辞書をつくります〜』で見せた佐々木薫役の演技です。この作品で彼女が演じたのは、極めて繊細で地道な職務に誇りを持つ製紙会社の営業員でした。そこには、バラエティで見せるような派手なアクションや甲高い笑い声は一切存在しません。眼鏡の奥に静かな情熱を宿し、相手の話に真摯に耳を傾け、辞書作りの過酷な条件をクリアするために淡々と、しかし粘り強く交渉を重ねる女性を、息をのむようなリアリズムで体現しました。
彼女の本質は「強気なキャラクター」にあるのではなく、「人間の内面に渦巻く覚悟と誠意を、身体の所作一つで可視化できる造形力」にあります。型通りのステレオタイプを演じているのではなく、脚本に書かれた人物の生活環境や職業倫理を徹底的にトレースしているからこそ、静かな役であっても観客の心を鷲掴みにするのです。