雄英高校での切島は、逆立てた真っ赤な髪と鋭いギザ歯がトレードマークですが、中学時代までは肩まで伸びた「黒髪のボブヘア」でした。この劇的なビジュアルの変化には、切島の人生を決定づけた痛切な過去が深く関わっています。
当時、同じ中学校に通っていた芦戸三奈は、明るく物怖じしない性格と優れた身体能力で、学内の人気者でした。ある日、路地裏で巨大な不審者(後のギガントマキア)に絡まれた同級生の女子生徒たちに対し、芦戸は恐怖で震えながらも機転を利かせて救い出します。その現場に居合わせながら、切島は恐怖のあまり足がすくみ、一歩も前に出ることができませんでした。
「自分は口先だけの臆病者だ」「こんな奴がヒーローになれるはずがない」という激しい自己嫌悪に苛まれた切島を救ったのは、往年の硬派ヒーロー・紅頼雄斗(クリムゾンライオット)のインタビュー映像でした。「心が折れねェ限り、人は立ち上がれる」という言葉に魂を揺さぶられた切島は、雄英高校合格を機に黒髪を脱色して真っ赤に染め上げ、ツンツンにセットしたのです。
この行動は単なるイメチェンではなく、心理学でいう「過去の脆弱な自己との決別と再定義」を意味していました。芦戸三奈という眩しすぎる存在への引け目を乗り越え、彼女を守れる男になるという誓いが、切島鋭児郎というヒーローを誕生させたのです。