田村睦心の真骨頂といえば、聴く者の胸を直撃する「少年声」の圧倒的な演技力です。なぜ彼女の少年声は、数多の女性声優の中でも突出してリアルに響くのでしょうか。そこには音声学的・身体表現論的なアプローチが存在します。
通常、大人の女性が少年を演じる際、喉を締めてピッチ(音高)をやや高めに設定し、記号的な「元気な少年」を作るケースが少なくありません。しかし田村睦心の発声は、胸腔から直接響かせるような骨太のハスキートーンに最大の特徴があります。息の混ざり方、思春期特有の声変わり直前のざらつき、感情が昂ぶった際の掠れ声が、作為を感じさせずに自然と表出するのです。
かつてのアニメ雑誌の取材記事や制作スタッフの対談でも、「田村さんの声には、少年の持つ無防備さと残酷さ、そして哀愁が最初から同居している」と絶賛されていました。『機動戦士ガンダム 鉄血のオルフェンズ』のライド・マッス役で見せた過酷な運命に抗う叫びや、鳥山明原作の映画『SAND LAND』で主人公の悪魔の王子・ベルゼブブを演じた際の愛嬌とやんちゃさは、彼女の天性の声帯と磨き上げられた表現技術の結晶と言えます。