「自分はどこか周囲と違う」という感覚は、時に人間から自尊心を根こそぎ奪い去る。シンガーソングライターの米津玄師は、かつて自身が高機能自閉症(自閉スペクトラム症)の診断を受けた過去を明かしている。集団生活における居場所のなさ、意思疎通の断絶から生じる深い孤独。だが、その内省と他者と交わらない独自の情動こそが、聴く者の胸を抉る唯一無二のメロディと詩世界を生み出す決定打となった。彼は他者と無理に溶け合うことを諦め、自室のDTM機器と向き合い続けることで、世界と交信する新たな言語を手に入れた。
一方、注意欠陥障害(ADD)を公表したモデル・俳優の栗原類が示したのは、徹底してプラグマティックな環境適応術だ。日常生活における物忘れや遅刻、片付けの困難。それらを根性論で克服しようとせず、スマートフォンのアラームを分刻みで鳴らし、衣服や持ち物の配置を定位置化するルーティンを構築した。母や周囲のサポートを受け止めつつ、自らの「できないこと」を冷徹に認め、システムで補完する。感情論を排したこの徹底的なセルフマネジメントこそが、パリコレのランウェイや緊張感あふれる演劇の現場で彼が信頼を勝ち得ている最大の武器である。
海を渡れば、米テスラやスペースXを率いるイーロン・マスクが、米コメディ番組の生放送でアスペルガー症候群を告白し、世界を驚かせた。彼の型破りな行動力や極端な集中力は、過剰適応を強いる組織人としては軋轢を生むかもしれない。だが、宇宙開拓やエネルギー革命といった非連続なイノベーションを駆動しているのは、まさにその強迫的なまでの探究心だ。彼らに共通するのは、かつて「アスペルガー症候群との闘い」と表現されたような内なる不協和音を、自らのプロダクトや表現へと直結させる驚異的な仕事術に他ならない。