日本のヤクザ映画の歴史を語るうえで、東映が世に送り出した『仁義なき戦い』シリーズは絶対に避けて通れない金字塔だ。それまでの義理人情を描いた様式美あふれる任侠映画を解体し、欲望と裏切りが渦巻く生々しい抗争劇へと塗り替えた。
主役の広能昌三を演じた菅原文太の演技は、まさに狂気と情念の結晶だった。手持ちカメラの激しい揺れの中で放たれる広島弁の怒号、血にまみれながらも生き延びようとする野性味。菅原が体現したリアリズムは、映画界全体に衝撃を与え、アウトロー映画の基準そのものを根本から覆した。
撮影現場では、脚本にない即興の緊張感が常に漂っていたという。共演者同士が本気で睨み合い、現場に持ち込まれた剥き出しの熱量がフィルムにそのまま焼き付けられた。この伝説的な熱狂が、後世のフィルムメーカーや俳優陣にとっての絶対的な指標となっている。