ネット上のQ&AサイトやSNSでは、「自首さえすれば前科がつかない」「警察は自首した人間を逮捕できない」といった無責任かつ危険な俗説が蔓延しています。しかし、これらは刑事司法の現場を無視した完全な誤解です。
第1に、自首しても逮捕されることは普通にあります。殺人、強盗、放火などの凶悪犯罪や、被害額が極めて高額な横領事件などでは、自首が法的に成立していたとしても、事案の重大性から逃亡や自殺を防ぐ名目で即座に逮捕・勾留されるのが実務の通例です。
第2に、自首=不起訴(前科がつかない)ではありません。検察官が事件を裁判にかけない「不起訴処分」を下すか否かは、自首の有無だけで決まるものではないからです。不起訴や起訴猶予の真相を紐解くと、そこには「被害者との示談締結」という極めて重い要素が絡み合っています。
痴漢、盗撮、暴行、傷害、窃盗といった被害者が存在する犯罪においては、いくら犯人が自首したところで、被害者が厳罰を望んでいる状態では検察官も起訴猶予にしづらいのが現実です。逆に言えば、「自首したこと」を土台としつつ、速やかに弁護士を通じて被害者へ真摯に謝罪し、示談金(被害弁償)を支払って「宥恕条項(被疑者を許し、処罰を望まない旨の条項)」を取り付けたときに初めて、起訴猶予による前科回避の扉が現実のものとなります。