佐藤早也伽というランナーの真価を語る上で欠かせないのが、名古屋ウィメンズマラソン2023で見せた壮絶なアクシデントと、そこからの執念のリカバリーです。レース序盤の約8km地点、給水付近の混戦のなかで他選手と接触し、アスファルトへ激しく叩きつけられるように転倒しました。
左膝や肘から流血するほどの打撲と裂傷を負い、一時は先頭集団から大きく離脱。現場の沿道観客や中継解説者が途中棄権を懸念するほどの衝撃でしたが、彼女は立ち上がると表情を一切乱すことなく即座に集団の追走を開始しました。痛みに耐えながら30km以上にわたりペースを刻み続け、最終的に2時間25分32秒の総合6位(日本人2位)でフィニッシュした姿は、多くの陸上関係者を震撼させました。
当時のレース後インタビューで彼女は「痛みに気を取られるよりも、これまで積んできた練習をここで無駄にしたくないという思いが勝った」と淡々と振り返っています。メディアが作りがちな「華奢でかわいいヒロイン」というステレオタイプを粉砕し、泥臭く勝利に執着する真のトップアスリートの魂を全国の視聴者に焼き付けた瞬間でした。