2月の手紙において最大の分岐点となるのが、2月4日頃に訪れる立春(りっしゅん)です。手紙の冒頭に冠する時候の挨拶は、古代中国から伝わる二十四節気(にじゅうしせっき)を基準にしており、立春こそが一年の始まりであり「春の起点」と定義されているためです。
立春を迎える前の2月1日から3日頃までは、暦の上では「晩冬(ばんとう)」に分類されます。そのため、このわずか3日間の書き出しには「晩冬の候」「大寒の候」「節分の候」といった、冬の極まりを告げる漢語調が用いられます。ところが、2月4日の立春を迎えた瞬間から、暦の上では「初春(しょしゅん)」へと看板が架け替えられます。
ここで多くの書き手が陥るのが、「まだ現実には雪が積もっているのに『春』と書く違和感」です。この心理的ギャップを解消するために編み出された知恵こそが、「余寒(よかん)」という概念に他なりません。余寒とは文字通り「立春を過ぎてもなお残る寒さ」を意味します。暦の上では春を迎えたという前提に立ちつつ、現実の凍てつく寒さに寄り添うこの表現は、立春以降の2月全般を通じて最も重宝されるキーワードとなります。